

たかが外耳炎、されど外耳炎


早速ですが、この写真は何だと思いますか?
実はこれはワンちゃんの耳の穴なのです。
通常であればこのように穴は狭くはなく、管のような耳の穴が見られるはずです。
ではなぜこのような状態になるのでしょうか?
実は外耳炎という病気が原因なのです。
垂れ耳で湿気や熱がこもったり、あるいはアトピーなどが発端となり、そこで二次的に菌が増えることで耳の痒みや悪臭、炎症を引き起こします。
炎症が酷くなると耳の中は腫れて穴を塞ぎ、その状態が長く続くことで耳の組織が軟骨に置き換えられ、耳の内側が骨のように硬くなってしまうのです。
そうなってしまうと治療が難しくなり、酷い場合は手術で耳を切除せざるをえなくなります。
外耳炎というのはよくある病気で、たいした事もないと考えがちですよね?
でも放置するとこんなに大変なことになってしまうのです。
外耳炎も初期から治療すればより良い状態を維持していくことができます。
ご自宅で定期的に耳を簡単にでもチェックしてみてください。
赤みや臭いがあったり、痒そうにすることがあればひょっとしたら外耳炎かも?
動物病院にご相談くださいね。
清瀬
ダニに噛まれてから元気がない?(バベシア症)


みなさん、ノミ・ダニの予防はしていますか?
「ノミダニがついてからでいいや」とか「かゆくなるくらいでしょ?」と考えがちですよね?
しかし、私たちが予防を勧めるのは他にも理由があります。
その内の一つに「バベシア症」です。
バベシアはダニの吸血によって感染する赤血球に寄生する小さな寄生虫の一種です。
それにより赤血球が壊されて貧血を引き起こし、元気消失・食欲不振となる病気です。
今回の症例は、ピットブル、1歳の男の子です。
1週間前にダニに数箇所噛まれ、1日前から元気・食欲がなくなったということで来院されました。
来院されたときはあれだけ元気だった子が元気もなく、ひどい貧血状態でした。
血液塗沫で赤血球中にバベシアを確認できたため、駆虫薬による治療を始めました。
一般的には駆虫薬に反応が良い病気ですがこの子は何度も再発し、治療期間も大変長いものとなりました。
ですがご家族とワンちゃんはあきらめることなくしっかり治療に参加してくださいました。
ご家族の努力とのかいあって今では元気に走り回っています。
赤血球に寄生するバベシアはもしかしたら命に関わるものになるかもしれません。また一度感染すると将来免疫力が低下したときに再発することだって考えなければなりません。
ちょっとしたノミ・ダニの予防でそれが防げるのであればとってもいいと思いませんか?
お薬はつけ薬や飲み薬と、種類がいくつかあるので、気になること、分からないことがあればいつでもお声かけください。
食欲がなく、なんだかグッタリ (子宮蓄膿症)


当院では赤ちゃんを希望されない女の子のワンちゃんに避妊手術をお勧めしています。
その理由の一つとして「子宮蓄膿症」という病気にかかるリスクがあるためです。
子宮蓄膿症というのは生理後の卵巣ホルモンにより子宮が肥厚し、子宮内の排液がうまく行われなくなります。
そして大腸菌などの菌に感染し、膿が蓄積してしまう、という命に関わる病気です。
今回の症例は11歳のミニチュアダックスフントで、食欲不振、元気消失、嘔吐、下痢を主訴に来院されました。
エコー検査により子宮に液体貯留が確認されたため、緊急手術をしました。
摘出した子宮には膿が溜まっていました。
術後は快方に向かい、食欲も戻って退院しました。
この病気の怖いところは、はっきりとした特有の症状があまり見られない事です。
陰部からの排膿が見られた際には子宮蓄膿症を疑いますが、その他の症状だけでは私たちでも区別は困難です。
そのため、生理から1~2ヶ月くらいで状態があまり良くないという事があればすぐに教えてください。
また、皆さんにもう一つ伝えておかなければならない事は、ワンちゃんには閉経というものがないのです。
なのでこの病気は何歳になっても起こるかもしれません。
そういった理由から年を重ねる前の避妊手術をお勧めしていますので、ご希望の方や気になる方はお気軽にご連絡下さい。
清瀬
嘔吐が続いて治らない (異物による腸閉塞)


嘔吐は病気として最もよく見られる症状の一つですが、その原因は様々です。
単にお腹が空いて吐くことがあったり、胃腸炎で吐くこともあります。
今回の症例はトイプードル、7歳の女の子です。ひと月前から嘔吐が続き、ご飯を食べなくなり、5kgあった体重が3.5kgに落ちていました。
元気もなく、触診ではお腹を痛がっており、何か硬いものが触れました。
エコー検査において腸に閉塞所見が認められたため、緊急入院して手術を行いました。
手術により摘出されたのはプラスチックチューブの先端部分でした。
オーナーさんに確認したところ、ハンドクリームの一部だと判明しました。
術後の経過は良好で、食欲も元に戻り、良い便もしています。
写真から分かる通り、腸の一部が変色していますが、これは異物が詰まったことで腸に送られる血液の流れが悪くなり、壊死という状態を引き起こしています。
この状態が続くと命に関わる危険性があります。
異物を食べてしまう子はよくいると思いますが、今回のように食欲がない、よく吐くといった症状が見られた際にはなるべく早く教えてください。
どの病気にも言えることですが、早期発見・早期治療がカギとなります。
まぶたの内側から赤い何かが飛び出てる? (瞬膜腺脱出、チェリーアイ)


子犬を飼い始めてしばらくしてからまぶたの内側から粘膜のようなものが出てきている、なんて事が稀にあります。
これは若い子に起きる瞬膜腺脱出(通称チェリーアイ)の可能性があります。
瞬膜腺は眼の組織の一つで、涙を作り出す重要な働きをするものです。
その瞬膜腺が成長過程で発育不全などが原因で飛び出してくる、という病気です。
今回の症例は3ヶ月男の子のチワワで、左眼の瞬膜腺が出ていました。
この病気は非外科的な処置では再発の可能性が高いため、手術により瞬膜腺をまぶたの内側にしまい込む、という治療を行いました。
手術により瞬膜腺はキレイに収まり、その後の経過も良好です。
チェリーアイは見た目の異常だけではなく、放置するとドライアイになることもあります。
その場合目ヤニが出続けたり痛みを伴うこともしばしばあります。
もしチェリーアイが見られた際には症状が出る前にご来院いただければと思います。
清瀬